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1. 用語の定義と概要

乳幼児期における排尿機能の発達には個人差があり、5歳未満の乳幼児にみられる昼夜を問わない睡眠中の尿もれは「おねしょ」と呼ばれ、成長過程における生理的な現象として扱われます。一方、5歳以降になっても1か月間に1回以上の夜間睡眠中の尿もれが3か月以上継続している状態は「夜尿症」と医学的に診断されます。また、日中の覚醒している時間帯にトイレ以外の場所で生じる尿もれは「昼間尿失禁(昼間のおもらし)」と区別されます。

夜尿症の有病率は5歳段階で約20%、10歳段階で約5%と報告されています。年間で約15%の自然軽快が期待できるものの、小学校高学年以降も症状が継続する症例が存在するため、適切な時期での相談と診療が推奨されます。

2. 夜尿症の病態分類と発生要因

夜尿症は臨床的特徴に基づき、出生時から一貫して夜尿が継続している「一次性夜尿症(全体の約75〜90%)」と、少なくとも6か月以上の正常な期間を経た後に再発する「二次性夜尿症(全体の約10〜25%)」に分類されます。さらに、症状が夜間のみに限られる「単一性症候性夜尿症(約75%)」と、昼間尿失禁などの下部尿路症状を伴う「非単一性症候性夜尿症(約25%)」に分類されます。

発生にかかわる主要な要因は大きく3点挙げられます。第一に、睡眠中の抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌不足や就寝前の水分・塩分過剰摂取に起因する「夜間多尿」です。第二に、通常は年齢とともに消失する睡眠中の不随意な膀胱収縮が残り、十分な尿を溜められない「膀胱容量の低下」です。第三に、膀胱が満タンになった際の刺激に対して目が覚めない「覚醒障害」であり、これら複数の要因が複合的に関与することで夜尿が生じます。

3. 併存疾患および鑑別診断

診療においては、排尿機能そのものの未熟さだけでなく、他の併存疾患の有無について鑑別することが重要です。特に便秘症は、直腸に貯留した便が膀胱を圧迫・刺激することにより、夜尿症および昼間尿失禁の両方を悪化させる主要因となります。そのため、排便習慣の改善を行うことで尿症状が大幅に軽快する事例が多く確認されています。

また、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)などの神経発達症を伴う場合、集中や注意の分散によって排尿意識やタイミング調整が困難となり、尿失禁を併存しやすくなります。その他、頻度は稀ですが、糖尿病、内分泌疾患、過飲症、二分脊椎などの神経系・尿路系の構造異常、睡眠時無呼吸症候群、尿路感染症などの全身性疾患が潜んでいる可能性を考慮した評価が行われます。

4. 治療方針と日常生活における指導方針

夜尿症治療の第一段階としては、日常生活習慣の見直しが実施されます。生活改善のみで全体の約2〜3割に症候の向上が認められるため、まずはこの基本指導を取り入れ、必要に応じて積極的な医療介入を追加する段階的アプローチをとります。

具体的には、日中は十分な水分を補給しつつ、夕食から就寝までの水分摂取量をコップ1杯程度(約200cc)に制限し、夕食時の塩分を控える水分・食事管理を行います。また、規則正しい生活リズムを整え、就寝前に15〜30分程度の間隔を空けて2回トイレへ行く習慣を定着させます。一方で、睡眠中に無理やり起こして排尿させる対応は、夜間ホルモン分泌や睡眠の質を乱し治療効果も得られないため避ける必要があります。

昼間尿失禁を伴うケースに対しては「定時排尿指導」が効果的です。これは直前に急激な尿意を感じる排尿パターンを補正するため、尿意の有無に関わらず朝食前、昼食前、おやつ前、夕食前、就寝前などあらかじめ設定した時間に排尿を促すアプローチです。足裏が床につく安定した姿勢でゆっくり排尿させる指導を併行して行います。

5. 薬物療法および行動療法

生活指導のみで改善が不十分な場合、第一選択の治療法として抗利尿ホルモン薬(デスモプレシン)を用いた薬物療法、またはアラーム療法が検討されます。デスモプレシン(口腔内崩壊錠)は夜間の尿量を直接的に減少させる薬剤であり、就寝30分〜1時間前に水なしで舌下投与します。投与に際しては、食後2時間以上あけて内服すること、また水分過剰摂取による水中毒を防止するための適切な飲水制限を守ることが求められます。

アラーム療法は、水分を感知するセンサーを装着し、排尿直後に音や振動で覚醒を促すことで睡眠中の蓄尿可能量を拡大させる行動療法です。保険適用外(自己負担)の治療となりますが、数週間から数か月間継続して取り組むことで高い改善効果が期待できます。これらで十分な効果が得られない場合には、膀胱収縮を抑える抗コリン薬やβ3受容体作動薬、三環系抗うつ薬、体調調整を目的とした漢方薬などが医師の判断のもと処方されます。

6. 学校生活および集団宿泊行事への対応

学校生活においては、排尿を過度に我慢することがないよう休み時間ごとの定期的なトイレ利用を習慣化させます。昼間のおもらしが頻発する場合は、必要に応じて学校側へ事前に状況を共有しサポート体制を整えることが推奨されます。

修学旅行や林間学校などの宿泊行事に際しては、行事の数か月前からの計画的な準備が不可欠です。夕食以降の水分管理の徹底、就寝直前の確実な排尿に加え、必要に応じて宿泊期間中に限った夜間の個別の声かけ調整などを行います。さらに、汚れが目立ちにくい濃い色のパジャマや市販の宿泊用おねしょパンツを準備すること、医療機関をあらかじめ受診し短期的な薬物調整を導入することなどが有効な対策となります。

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📚 出典・参考文献:
日本夜尿症・尿失禁学会『夜尿・昼間のおもらしについて』 / 日本夜尿症学会編『夜尿症診療ガイドライン2021』